父
父の死体を初めて見た時は悲しいというよりはただ呆然としていてなんだか夢を見ているような気分だった。火葬が終わって骨だけになってしまった父の姿を見てようやく自分は父を亡くしたと理解した。自分は父とはどちらかというと仲が悪かったし思い返すと怒られてばかりだった。それでもその時は、今まで父と過ごした日々が走馬灯のように駆けめぐって涙が止まらなかった。
父が、亡くなる一週間前に
「おれもあと30年しか生きられへんなぁ」
と言っていたのが今でも忘れられない。
父が亡くなり色々後悔した。もっと話しておけば良かったとかそういうありきたりなことをただひたすらに後悔した。
みんなには自分のような後悔をしてほしくない。そう思って、自分は何人かの人に親は大切にしろだのなんだの言ったことがある。でもそれは多分間違っている。どうしたって後悔しないことなんてないし、本当に大切なものは失って初めて気付くものだ。
だから後悔するときはちゃんと後悔するべきだ。そしてその後悔とどう付き合って生きていくか考えることが一番大事だ。
21歳の若者が何を分かったような口でと父に叱責されそうだが、この気付きが今後の人生の糧になればと思う。